バセドウ病とは?
バセドウ病とは?どんな病気か?
甲状腺ホルモンは、全身の臓器に作用し、代謝を司るなど大切な働きを持ち、よく車のアクセルに例えられるホルモンです。甲状腺ホルモンを過剰に産生してしまう病気を甲状腺機能亢進症といい、バセドウ病は代表的な病気です。
バセドウ病の有病率はどれぐらいかというと、人口1000人あたり0.2~3.2人と報告されており、20~30代の比較的若い女性に多い病気で、男女比は1:3~5くらいと言われています。
バセドウ病を発症する原因は何か?
バセドウ病は自己免疫疾患のひとつです。免疫というのは細菌やウィルスなどから体を守るために働くものですが、その免疫が自分の体を攻撃してしまうことを自己免疫といいます。脳にある下垂体と言われるところから分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺にあるTSH受容体を刺激することによって甲状腺ホルモンは分泌されています。バセドウ病は、このTSH受容体に対する抗体が体内で作られてTSH受容体を刺激し続け、甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されることで起こる病気です。要するに何もしていない(TSHが分泌されていない)のにTSH受容体のスイッチを勝手に押して、甲状腺ホルモンを出し続けてしまうということです。
TSH受容体に対する自己抗体が作られる原因は未だに判明していませんが、バセドウ病になりやすい体質を持っている人が、過度なストレス、妊娠や出産、何らかのウイルス感染などをきっかけとして発症すると考えられています。
バセドウ病の症状について
代謝に関する甲状腺ホルモンや、アドレナリンが過剰になるため、典型的には、胸の動悸、体重減少、手指のふるえ、下痢、ほてり、汗かきなどの症状が多いです。その他にも疲れやすい、便がゆるい、力が入らない、怒りっぽくなったり、といった症状を生じることもあります。女性では月経不順になることがあります。見た目では、程度は様々ですが甲状腺が全体的に大きく腫れてきます。(甲状腺は頚部、のどぼとけのすぐ下にあります)。また重症になると眼球がとび出したり、することもあります。また男性に多いのですが、周期性四肢麻痺といって、食事をたくさん食べた後や運動後などに手足が突然動かなくなる発作が起こることがあります。
バセドウ病の治療について
薬物治療、放射性ヨウ素内用療法、手術の3つの治療選択肢があります。
薬物療法
薬物療法は、外来で治療が始められるため、ほとんどの場合には第1選択肢となることが多いです。大きな注意点として、副作用が生じる可能性があること。また治療効果に個人差が大きく、動悸などの症状、甲状腺ホルモン値が落ち着いて、一旦、治療を中断しても再発率が高いです。薬物療法で治療改善することが難しい場合は、他の治療法を考えることがあります。
放射性ヨウ素内用療法
放射性ヨウ素内用療法は、安全で効果が確実であり、甲状腺の腫れも小さくなります。しかし、再発がないようにすると、甲状腺ホルモンが低下する状態となり、甲状腺ホルモン薬の服用が必要になる場合があります。欠点としては、実施できる医療機関が限られていること、バセドウ病眼症が悪化することがあること、小児や妊婦・授乳婦では行えないことなどが挙げられます。
甲状腺摘除術
甲状腺摘出術は、確実に治療効果が得られます。再発がないように全摘除を行うと甲状腺ホルモン薬の服用が必要になります。欠点としては、入院が必ず必要であること、手術痕が残ること、手術合併症(反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症など)が生じるリスクがあることなどが挙げられます。
よくある質問
・バセドウ病の経過について
未治療では、心房細動や心不全、骨折(骨密度低下)などが生じてくるリスクが高いため、早期に治療が必要となります。治療後の経過は、どの治療法を選択によって大きく変わります。また個人差もあります。治療のゴールとしては甲状腺ホルモンが正常に保たれている状態を目指します。
・バセドウ病は遺伝するのか?
バセドウ病は過度なストレス、妊娠、出産、授乳など環境要因が加わって発症することが多いです。血の繋がっている家族がバセドウ病の方は、一般の人に比べて20~40倍くらいバセドウ病になりやすいと報告してされています。
・バセドウ病の治療中に注意すること
ストレスによって病気が悪化・再発することがあります。可能なかぎり、なるべくストレスを避けて規則正しい生活を送ることが大切です。甲状腺ホルモンが高い時期に大怪我や手術を受けると危険な状態になることがあります。また喫煙の影響で、内服薬の効きが悪かったり、バセドウ病眼症眼の悪化につながりますので禁煙が必要になります。