糖尿病の治療
糖尿病治療の目的とは
糖尿病があっても、血糖コントロールを良好にして糖尿病がない人と同じ健康寿命、生活の質を維持することが糖尿病治療の目的です。血糖コントロールの不良状態が長期間持続すると、神経、眼、腎臓など様々な合併症を引き起こします。合併症が進行すれば足のしびれ、痛み、感覚が鈍くなったり、視力の低下から失明に至ることもあります。また腎臓の合併症が進行すれば人工透析が必要になり、生活が制限されます。糖尿病の合併症により、生活の質が低下し、寿命にも影響します
また現在合併症のある方も血糖値を良好にすることにより、合併症の進行や他の合併症の発症を予防することができます。合併症を予防し、健康寿命、生活の質を維持することが血糖コントロールを良好にする理由です。
糖尿病治療の基本
食事療法
最も重要な治療方法です。食事摂取により糖分が体内に取り込まれます。食事の内容によって糖の量やエネルギーのバランスを調節することが大切です。
運動療法
食事療法と同様に糖尿病の基本となる治療方法です。運動することにより、エネルギーが必要となり、糖が使用されます。また筋肉量を増やすことにより、糖質を消費し、エネルギーを上手に使うことができます。
薬物療法
現在、糖尿病治療薬には様々な種類があります。飲み薬と注射薬(インスリン、GLP1受容体作動薬)があり、患者さんのライフスタイルも考慮し、治療は選択されます。
血糖コントロールの目標
糖尿病の合併症を発症させない、また進行させないためにはHbA1c7.0%にするといったガイドラインがあります。
しかし、実際には人それぞれ、生活習慣、からだの状態、治療内容も異なるため一概にHbA1c7.0%が目標とは言えません。
高齢者では年齢、認知機能、治療内容(低血糖を起こす薬の有無)によって血糖コントロールの目標値は変わってきます。(下記表)
逆に若い方、特に妊婦の方では厳格な血糖コントロールが必要とされています。ご自身の血糖コントロールの目標を主治医に確認しましょう。
糖尿病治療を成功させるためには?
継続すること
糖尿病は根治することは困難で、コントロールする、付き合っていくといった考え方が大切です。一時的に頑張りすぎるのではなく、気長にやっていくという気持ちが大切です。上手くコントロールできれば合併症の予防をすることができます。できることからコツコツとやってきましょう。
セルフチェックをすること
糖尿病は症状がほとんどでない病気です。定期的に血糖値、体重、血圧などを測定することが大切です。毎日記録することで、血糖値がよくなったりすると治療を継続する励みになります。万歩計をつけることや、最近ではダイエットアプリなどで管理するのもおすすめです。
サポーター、理解者を作りましょう
糖尿病治療には生活習慣の改善が必要不可欠です。普段食事を作ってくれる方、家族、会社の同僚など周囲の人が、糖尿病を理解し、自身を支えてくれる存在を見つけましょう。もちろん、主治医、看護師、栄養士、薬剤師など医療スタッフはサポーターです。糖尿病治療は1人で行うことは困難で、糖尿病の患者さんを主役とした、チームで取り組むことが糖尿病治療を成功させる秘訣です。
日本糖尿病学会編・著 糖尿病治療ガイドライン2014-2015文光堂
日本糖尿病学会編・著 糖尿病専門医研修ガイドブック改訂第7版 診断と治療社
日本糖尿病学会編・著 科学的根拠に基ずく糖尿病診療ガイドライン2013第3刷 南光堂2014